kindleコミック「モリのアサガオ 新人刑務官と或る死刑囚の物語」

日本には死刑制度と言うモノがあります。
主に残忍に人命を奪う様な許しがたい重罪を犯した者に科される、極刑…
つまり命を絶たれるのですから、これが最も重い刑ではないでしょうか。
勿論一生塀の中から出られない…無期懲役って言うのも確かにキツイとは思うんですが、日本って外国の懲役数百年とか言う絶対出られない年数の懲役って訳ではなく、服役中に模範囚にでもなれれば、数年での出所も可能だったりしますからね。
そう言う背景もあってか、死刑と言うモノは他の刑とは明らかに違うモノだと認識しています。本当に許されざる罪を犯した人に科せられる刑罰なのだ、と。
勿論、死刑になってもおかしくない事をしておいて、無期懲役の判決が下ってる犯罪者も多いと思います。その辺の判決って一体何が違うのかって疑問もありますが、きっとお偉い方の中で色々とあるんでしょう。
モリのアサガオと言う漫画があります。この漫画、以前ドラマにもなったと思います。
拘置所に配属された新人刑務官・及川直樹の視点で、拘置所に収容されている死刑囚たちの日々の生活、何故彼らが犯罪を犯してしまったのか…など「死刑囚も身勝手で利己的な理由であっても、道を踏み外してしまった一人の人間なのだ…」と思ってしまう様な事情が浮き彫りにされていきます。
刑務官は拘置所では死刑囚の世話をする事が主な任務です。
刑務官にも色々あって「死刑執行までに自らの罪を悔い改めキレイな心で死んでいくべきだ」と考え死刑囚に接している者もいれば「死刑囚は改心なんかしない、人間のクズばかりだ」と、死刑囚を嫌悪する者もいます。「モリのアサガオ」の主人公の直樹も、被害者や遺族の事を思うと、自分のやった事を悔い改めて刑に望んで欲しい。そんな思いで死刑囚に向き合っていきます。最初は悩み苦しみ憤りたくさん泣きもしたけれど、直樹は死刑囚達と心を通わせあっていきます。
そして、改心したばかりの死刑囚に何の予告もなく訪れる死刑執行…
改心したのに死刑にする意味はあるのか。直樹の心の中に、ふとそんな疑問が湧きます。
一度は「罪を悔い改め、改心したからこそ、これで彼は天国に行く事が出来るのだ」と自分たちを納得させようとしていましたが、実際に刑が執行される事により、何が正しいのか、本当にそれでいいのか、ますます解らなくなります。
刑務官は死刑執行にも立ち会います。
そのため、精神的に病み、刑務官を辞めてしまう者も…
直樹の先輩刑務官も、初めて死刑執行に立ち会う事になり「あれは人間のやる事ではない。命乞いする改心したばかりの死刑囚を殺したんだ。自分は人殺しの片棒を担いだんだ。」…と、耐え切れずに刑務官を辞めてしまいます。
死刑にされる方も怖いけど、死刑執行をしなければいけない刑務官も嫌な仕事ですね。普通の感覚なら、例え死刑囚とは言え人を殺すと言う行為には、どうしようもない抵抗感があると思います。
あんまり言うとネタバレになるので突っ込んだ話は出来ないんですが、死刑って一体なんだろうって今回初めて真面目に考えたかもしれません。
死刑囚が死んだって、被害者が帰ってくる訳でもなく。
死刑囚が死んだって、罪が全部消える訳ではない。
残した傷や失ったモノは事実として永久に残る。
…では、このまま生かしておく?
被害者遺族や、世論はきっとそんな事は許さない。
…考えても完璧な答えなんかでないでしょうけど、難しい問題ですね。
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死刑とは一体なんだろう。色々と考えさせられます…。