Kindleコミック「ぼくらの」
鬼頭莫宏原作「ぼくらの」
アニメ化もしましたし、当初は結構な物議をかもし出した漫画だったと思います。
なにが物議をかもし出したのかって
子供たちが主役で尚且つ地球の存亡をかけてロボットに乗って戦うと言う王道中の王道テーマにも関わらずひとつの戦いが終わるごとに例外なくひとりずつ子供たちが死んでいくと言う鬼畜設定。
これはうつにならざるを得ません。
だって戦いに勝っても主役である子供たちは必ず死んでいくんですもの。
どこに救いがあると言うのか。
ちなみに子供達が乗るロボット「ジアース」。これの正体も、あんまり詳しく言ったらネタバレになってしまうんですが、原動力がパイロットの命なのです。そして計15体の敵ロボットと戦わないといけないので、この戦いに勝っても、計15人の命が確実に失われる訳です。
トータルで見れば「15人の命と引き換えに地球が救われるなら安いもんじゃん」みたいな考え方もあるかもしれませんが、戦いに勝っても負けてもパイロットの子供たちは死んでいく訳で、気が晴れません。ロボット漫画とは言えこの「ぼくらの」は爽快感とかそういうモノを求める趣旨の漫画ではないのはわかるので、それは致し方ないと頭ではわかっていますが。爽快感どころかモヤモヤしますし。
なら、この漫画「ぼくらの」は詰まる所、読者に対して何を訴えかけているのか。
一回戦・二回戦と子供たちはジアースに乗って戦って時には辛勝しながら命を落としていく訳ですが、その回毎にパイロットに選ばれた子供たちの生い立ちや心情にフォーカスされます。
そしてこの子供たちはそれぞれに複雑な事情や悩みをかかえています。それでも、戦う前には、自らの思いやコンプレックスと向かい合い、納得し、そして戦って死んで行きます。
「ぼくらの」は、ロボット物であるにも関わらず、ジアースや敵ロボット達の戦いよりも、こっちの方が本題なのだと思います。パイロットや人間関係の葛藤に重きを置いてるロボット物は他にもあると思いますが「ぼくらの」の方がその比重が圧倒的に重いではないかと思います。
「ぼくらの」のテーマは「生きる事」なのかなと思いました。
死を前に生きる事と真剣に向かい合う。
死を考える事と生を考える事は同じ事だと、誰が言ったかは忘れましたが「ぼくらの」は正にそれです。
逃れられない死の運命と向かい合いながら、自分がいなくなった世界に残される者たちの住む地球の為に戦う子供たちの命の物語。
…気になった方には「ぼくらの」オススメです。
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